ときめきに死す~防衛大学校の棒倒し~②

棒倒しは一発本番の行き当たりばったりの競技ではない。開校記念祭の競技会に向けて、各大隊は作戦を考え、練習を続けていく。そこには熱いドラマと青春が存在する。しかし、そんなドラマに冷めた目で参加する学生がいた。それがぱやぱやくん、つまり私だ。

第一話はこちら

1.棒倒しは10月から始まる

防衛大学校の棒倒しは11月の開校祭当日に1発本番ではない。10月からメンバー調整⇒練習⇒本番メンバー選出があり、10月からひたすら各大隊で練習をする。

もちろん棒キチ学生たちは「今年もこの時期がやってきた!」「王者奪還の〇〇大隊」など盛り上がりを見せるが、やる気のない学生たちは「今年も戦に駆り出される....」「赤紙がくるぞ...」と戦々恐々とするが、無慈悲にも戦いに巻き込まれていく。この時期は上級生がいきなり部屋に入ってきて「棒倒しの攻略本だ!」と「魁男塾」や「花の慶次」を下級生に読ませることもある。それ読んだ下級生は上級生に「棒倒しこそ、男の華ですね!」などよくわからないことを言う。こういった祭りの熱が徐々に学生を取り巻くのが防衛大学校の10月なのだ。

2.棒倒しのポジションについて

棒倒しには攻撃・防御ともにポジションがある。棒倒し競技会の際は自分のポジションで天寿を全うすることが極楽浄土に行ける唯一の道だといわれている。ここで攻撃・防御の各ポジションについて紹介をしよう。

攻撃ポジション

攻撃はその名の通り、相手の棒を倒すポジションだ。攻撃は防御よりも「運動神経が高いオラオラ学生」が集められる傾向があり、彼らは血気盛んに闘う。戦っているふりをする百姓足軽タイプはあまりおらず、学生生活を満喫してそうなメンバーで固められている。次にポジションについて解説をしていこう。

特攻
棒倒しの花形のポジション。敵の棒に勢いよく飛び掛かり、敵の棒を倒すのが任務だ。運動神経の良い細身の陽キャが選ばれることが多く、棒キチ学生も多い。勝負の雌雄を決するのはまさに彼らであり、自分が棒を倒して優勝をしたら一生の思い出になることは間違いないだろう。ただ負傷率も高いので練習で骨折して本番欠場者も多い。

スクラム
名前の通り、スクラムを組んで相手陣地の棒に突っ込むポジション。そのスクラムをステップにして味方の「特攻」が棒を目掛けて突撃をする。攻撃にしては唯一地味なポジションであり、ひたすらスクラムを崩れないように頑張る。その姿は防衛省でこき使われる幕僚幹部にも似ていると言える。

遊撃
特攻やスクラムを阻止しようとやってくる敵の防御を抑えるポジション。柔道部やレスリングなどの体術が強い学生が選ばれやすい。遊撃は危険分子の学生が多いので場外乱闘に発展しやすく、からまれると危険だ。防御のポジションになったら彼らが来ないことを祈ろう。

攻撃については以上となる。次に防御とそのポジションについて解説をしよう

防御ポジション

防御は攻撃よりも地味で痛いポジションが多い。花形である「サル」「キラー」などのポジションは戦闘力高めの学生が集まるが、防御は基本的に「運動神経がない陰キャ」が集まりやすい。防衛大学校は全員オラオラ系の体育会系に見えるが、実は陰キャもオタクもいる。彼らは防衛大学校の棒の周りに生えるドクダミ草として、もみくちゃになる運命を背負っている。それでは防御の各ポジションについて解説をしよう。

サル
棒の上に乗るポジション。まさに棒倒しにおける最高のポジションであり、大隊の華である。小柄で運動神経が良く、負けん気の強い学生が乗る。このポジションで勝てば最高の勇者として称えられる。しかし開始30秒で引きずり降ろされると「戦犯」になりやすい。まさに野球部のエース的なポジションだ。

棒持ち
棒を支えるポジション。ただの奴隷であり、苦痛しか味わうことのできないマゾ向けのポジション。ひたすら倒れそうな棒を圧死しそうになりながら支える彼らは、写真にも写らない美しさがあるドブネズミだ。運動神経はないが忠誠心の高さそうな学生が集められる。上級生は「死ぬ気で支えろ!」というが死ぬ気で支えると死ぬので注意が必要だ。

上乗り
棒を支える棒持ちの上に立って、敵の特攻を阻止するポジション。グラグラする足場に残り続けるのが大きなカギであり、特攻を邪魔すればするほど勝利に近づく。敵の遊撃がやってきて引きずり降ろされることもあるので、このポジションも負けん気がある学生がやる。ただ引きずり降ろされると洗濯機のように揉みくちゃにされる。まるで政権崩壊しそうな独裁国家の官僚のようなポジションなのだ。

サークル
棒の周りをぐるっと囲んで守るポジション。そんなに痛くなく、移動が少ないので比較的楽なポジション。お役所的なポジション。たまに敵の攻撃に一騎当千的な柔道部の主将などがやってきて、サークルの円をぶち壊すことがある。そんなときは運がなかったとあきらめよう。

キラー
攻めてくる敵を妨害するポジション。柔道部などに所属する戦闘力高めの陰キャが多い。強い陰キャが強い陽キャと戦う。陰と陽のせめぎあいからは目がはなせない。

棒倒しのポジションについては大きくわけると以上になる。どのポジションになるかで棒倒しの楽しみ方は変わる。もし哀れな棒持ちになったら自分の運命を呪おう。

3.とりあえず買わされる大隊パーカー

棒倒しのシーズンでは「帰属意識を高めよう!」と「大隊パーカー」と呼ばれる大隊のキャラクターが描かれたパーカーを「買わされる」配布ではなく自費購入だ。ちなみに毎年新しいバージョンができるので、うっかりする毎年購入するはめになる。

本当に棒倒しと所属大隊、防衛大学校が大好きな問題ないのだが、特に興味がない学生にとっては「もう大隊パーカーはいらんよ...去年のあるし」という気分になり、数年前のバージョンの棒倒しパーカーを着ている学生もいる。なお「大隊パーカー」のデザインは学生が行っているのだが、年によってはデザインが着るのも恥ずかしい「クソダサパーカー」になっていることもある。そういった不人気には購入辞退者が多数発生するが、在庫が大隊に余ってしまう。そこで大隊想いの怖い4学年が「この超かっこいいパーカー買えよ!優勝するんだろ!」と無茶苦茶な理論で3学年以下に売りさばく。こうして「はいorYES」の防衛大学校の秩序は保たれるのであった。

4.次回は棒倒しの練習について

おっす!オラぱやぱや!
他大隊が練習を始めた!オラもこうしちゃいられねぇ、特訓を始めなきゃ!
大変だベ…、学生がどんどん病院おくり...
次回、防衛大学校Z『作戦No.79 悪魔の12時ドン!!』
部屋長もう怪我治ったかなぁ?

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