防大・自衛隊の思い出をつづります。

ときめきに死す~防衛大学校の棒倒し~③

棒倒しのための訓練。訓練のたびに怪我。歴史の果てから連綿と続くこの愚かな行為。ある物は悩み、あるものは傷つき、あるものは自ら絶望する。だが営みは絶えることなく続き、また誰かがつぶやく。「たまには棒倒し訓練も悪くないと・・・」

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1.棒倒しは練習じゃない。訓練だ!

防衛大学校の棒倒しの練習は各大隊、毎年10月下旬からスタートする。これは正確に言えば「練習」ではなく「訓練」だ。この期間に棒倒しに対する心構えから怪我をしない方法、敵に勝つ方法などを上級生が下級生に仕込み、優勝に向けて突き進む。

この訓練は楽しいかどうかでいえば、ぜんぜん楽しくない。雰囲気としては「大きな戦の前に領土の百姓に訓練する」感じだ。指導部になっている棒キチ学生たちは熱いが、それ以外のメンバーは「また訓練か...」という感じだ。棒倒しシーズンになると朝の点呼後(06:30~)と課業終了後(16:30~)に訓練を行う。それでは練習について解説をしていこう。

2.朝の訓練について


棒倒しシーズンになると朝の点呼後(06:30~)と課業終了後(16:00~)に訓練を行う。防衛大学校では起床のラッパがなった後に、ダッシュで5分以内に隊舎の前に集合した後に点呼を行う。点呼終了後に棒倒し総長に選ばれた学生が朝礼台に上り「うぉーーー!!!お前ら元気か!!!棒倒し訓練いくぞーーー!!!」と絶唱する。防衛大学校は低血圧な人間は生きていけない世界なのだ。

その後に整列をして学生たちはグラウンドに訓練に出かける。グラウンドに行くときはドラム缶太鼓を叩きながら「ソイヤ!ソイヤッ!」「セイヤ!セイヤ!」と声出しをしながら、腕を振り上げて進む。ここで「防衛大学校ではなくて、〇〇大学に進んでいたら今頃は彼女と...」とは決して思ってはいけない。もう手遅れだ。なおやる気のない4学年は「ちょっとトイレに行くわ」と言い、自分のぬくもりが残るベッドに直行するのもまた事実である。

グラウンドに行くとタックルや受け身の練習、とび馬をさせられる。10月下旬になると気温が下がり、寝起きなので身体はがちがちだ。秋風に体はこわばり、寝起きの体に受け身は痛い。そんなときに棒キチ学生が「お前ら気合い入れろーー!!」など大声を出す。雰囲気としては百姓が「いくさ」の前に足軽になるための訓練を受けている感じだ。ただ一学年はここで死ぬ気で頑張ると「あいつはマジで気合入ってる」と上級生から認められ、学生舎でポカをやってもある程度目を潰ってもらえる。もちろん一学年がだるそうな姿を見せると上級生から処刑されるので要注意だ。なお4学年になると「寝技の練習をしているふりをして居眠りする」などの技を駆使して体力を回復させることも可能だ(露骨にやらないのがコツだ)

棒倒しについては4年間参加したのに思い出は「寒い」「眠い」「痛い」しかない。なのでこの辺にしておこう。

3.夕方の訓練について

課業終了後(16:00~)の訓練は朝よりも強烈で力強く、そして痛い。こちらは講義が終わり、学生舎にいると1600ぐらいに「棒倒し訓練っっ!集合ーーーー!!!」と放送がかかり、それとともにテーマソングが流れる。テーマソングは北斗の拳 の主題歌や「愛をとりもどせ!!」などが選ばれることが多い。

集合の合図とテーマソングで学生たちは「うぉーーー!!!」など叫びながら隊舎の前に集合をする。そして朝の訓練と同様に、再び棒キチ学生が朝礼台に上り「お前らーーー!!気合い入ってるか!!」と絶唱し、「うぉーーー!!!」と百姓学生たちが返す。そしてグラウンドに向かい、防御と攻撃に分かれてぶつかり稽古を行う。

訓練は同じ大隊ではお互いに真剣(ガチ)でやるので結構痛い。本番の時とちがって流石に飛び膝蹴りなどはないが、日比谷焼討事件のイラストのような揉みくちゃとなる。

体感的には本当にこんな感じ

そして2分間の時間を図り、2分以内に棒を倒すと「攻撃側の勝利」2分間倒れないと「防御側の勝利」となる。この取っ組み合いを1日2~3回ほど行うのだが、あまりの激しさに怪我人もドカドカでる。ある上級生は「お前らは気合が入ってないから怪我をするんだ!!死ぬ気でやれば大丈夫!!」と喝を入れたが、その日の練習でその本人が靭帯断裂で救急車で運ばれていった。死ぬ気でやると死んでしまうのが棒倒しなのだ。

あまりの怪我人が出るので「これ訓練しないほうが人的消耗なくて強いんじゃない?」と毎年思ってたのは内緒である。

4.次回は棒倒し本番について

降り注ぐ益荒男。欲望と秘密と暴力の棒が倒れる。圧倒的、ひたすら圧倒的パワーが蹂躪し尽くす。ささやかな望み、芽生えた愛、絆、けなげな野心。老いも若きも、男も女も、昨日も明日も飲み込んで走る炎、炎。音を立てて棒が沈む。おたのしみに

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