防大・自衛隊の思い出をつづります。

嵐を呼ぶカッター訓練(後編)

ついにカッター競技会が終わりを迎えようとしている。ぱやぱやくんの期別は入校式からここに至るまで100人が退校し、残る同期もここまで耐え忍んできた。だがカッター競技会が終われば、ついに人権を与えられる。奴隷生活を終えてついに人権を...

前編・後編はこちら

カッター訓練の前にも課題は多い・・・!

カッター訓練も終盤の4月20日頃になると「カッターのセンスがある2学年」と「カッターのセンスがない2学年」に分かれてきます。ここには運動神経や本人の努力も関係しています、私は運動真剣がなく不器用だったためカッタークルーから見事に除外されました。そうなると「カッター訓練なのにただ陸上トレーニングでシゴかれている人」という構図が誕生し、もはやカッター訓練が終わるまで腕立て伏せやランニングをしているだけになりました。

陸上トレーニング組は校内で行うので比較的早く終了しますが、海上で短艇に乗っているメンバーは校外にある「ポンド」と言われるカッター訓練場に行くため、訓練終了後は走って時間ギリギリに帰ってきます。短艇に乗っているメンバーは4月28日頃に行われる中隊対抗のカッター競技会で「金クルー(優勝)」になるため、毎日必死なのです。

しかし、ここで誕生するのは「短艇で海に出ているメンバー」と「陸上でトレーニングしているメンバー」の温度差です。だんだんと短艇のメンバーから「陸上組は役にたたない」という声が上がり、負けん気の強い陸上組は「お前ら調子乗るなよ!」と熱い青春のドラマが繰り広げられます。そんな皆が熱いドラマを繰り広げている中、私は「今日もたくさん運動したぞ」とまったく謎の充実感を覚えつつ、とりあえず「みんなで金クルー(優勝)になるんだろ!」と一言言って満足をしていました。本当にだめな学生ですね。

なおこの辺りまで来ると学生舎生活も「2学年に厳しくする」というよりも「優勝させよう」という機運が高まるので、正直楽になります。あまり厳しい指導されなくなってくるので、人権ゲットまであと少しとなります。

カッターコント

そうした熱いドラマが繰り広げられ、ついにカッター競技会の前日となりました。当時はカッター競技会前日の夕方の点呼後には「カッターコント」というイベントがありました。これは2学年が中隊の前でコントを行うもので、当時の防衛大における伝統の一つでした。

ここでは無礼講で「上級生をイジっても良い」という不文律があり、上級生のモノマネをする者もいました。私は自分の貴重品ロッカーの名前を、怖い先輩の名前に変え「おーい、○○さんのロッカーを持ってきたぞ!」と中隊全員の前に持っていきました。そしてロッカーを開放し、事前に仕込んでおいたエロ本と丸めたテッシュを出して「おいおい、○○さんのロッカーはエロ本とティシュまみれだぞ!お盛んだなぁ」という愚にもつかないギャグを行ったのです。中隊は爆笑に包まれたが、当該の○○さんは青筋立てて苦笑いをしていました。これが私のカッター訓練最大のハイライトであり、忘れられない思い出の一つです。

なお余談にはなりますが、カッターコントは「品性がない。本当に幹部自衛官になるものとして必要なのか?」とお偉いさんが言って、どこかの期別で廃止になったとも聞いたことがあります。実は防衛大学校は大隊・期別によって微妙に考え方やイベントが違うので、同じ期別でも「そんなことあったの!?」と言われることが多々あります。これが「ぱやぱやくんは偽防大卒」と言われる理由なのです。

ついに本番当日...!

カッター競技会の当日にもはや厳しさなどはなく、ただの「お祭り騒ぎ」となります。大隊の旗を持って走り回る学生がいたり、「優勝」と身体にマジックペンで書いて日朝点呼を行う学生、リポビタンDをみんなに配る上級生などやりたい放題の日となります。なおカッター競技会で優勝すると「櫂立て」が出来るので「お前ら~!海の上でおったてこい!」「海に潮を吹かせろ!」などよくわからないことを言う上級生もでてきます。もちろんみんなテンションが高いので「海をイカせます!」などと返しました。このノリが当時の防衛大学校だったのです。

出展元:防衛大学校HP(https://www.mod.go.jp/nda/obaradai/boudaitimes/btms200805/cutter/cutter200805.htm)

そしてカッター競技会が始まります。カッターを乗る選手は海に出て、ほかの学生は海岸で自分の中隊を応援します。私は残念ながらカッターに乗らなかったのでただ応援しているだけでした。応援している中で「これ声聞こえてんのかな?」と思っていましたし、後でカッターに乗っていた同期に聞いたら「なんも聞こえなかったよ。むしろどこにいたの?」と言われてしまった。つまり私が中隊にできた貢献度はそんなもんだったのです。

出展元:防衛大学校HP(https://www.mod.go.jp/nda/obaradai/boudaitimes/btms20100500/top20100500.htm)

つぎに海に出ているメンバーのことを話しましょう。カッター競技会は海上で行われるため、レースの結果が気象条件にかなり左右されることになります。そのため潮や風の流れにうまく乗れてしまうと「模擬戦ではビリのほうだったチームが優勝」といったミラクルもたびたび起こります。ただ海上では気象がかなり重要なファクターを占めるので、それはそれで学生たちに良い学びになるのも確かなのです。なおラグビーやアメフト部員が多い中隊はアホみたいに強くなるので、ぶっちぎりで優勝となる年もあります。そうしたチート中隊を防止するために、今では乗船メンバーをくじ引きで決めるそうです。まあそっちのほうがフェアだよね。陸上トレーニングはしごかれるだけだし。

出展元:防衛大学校HP(https://www.mod.go.jp/nda/obaradai/boudaitimes/btms200605/taimuzu200605top.htm)

そしてカッター競技会を終えて優勝した中隊は学生隊の前で「カッター優勝中隊」として表彰されます。これは防衛大学校の学生生活でも名誉とされている看板の一つであり、卒業後も同期会やOB会で「金クルーが~」というおじさんもいます。

出展元:防衛大学校HP(https://www.mod.go.jp/nda/obaradai/boudaitimes/btms200805/cutter/cutter200805.htm)

この競技会が終了すると学生舎で「よし、じゃあ人権を与えよう」と2学年が人間らしく暮らせる権利を与えられます。「廊下を走らなくてもよい」「全力で挨拶しなくてもいい」「20歳以上の酒・たばこの解禁」「私服外出・外泊OK」「他人の居室に入るときに入室要領省略」など、普通の暮らしができるようになります。しかし、ここから堕落生活が始まる学生も出てくるので自分を律する必要が出てきます。ちなみに私は2学年からは暇があれば図書館でよく本を読み、図書館でよく昼寝する学生となりました。

おわり。

 

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