私が質問されて困る言葉に「陸上自衛隊はいつもは何の仕事をしているの?」があります。
理由は質問者が「毎日戦闘訓練をして実弾射撃をしています!」という返答を求めていても、実情は全ての隊員がそうではないからです。部外者の方にはあまりイメージができないでしょうが、陸上自衛隊の仕事とは「富士の麓で大砲を撃ちまくる」や「朝から晩まで泥だらけになって匍匐前進していること」ばかりではありません。
今回はそんな陸上自衛官の知られざるお仕事について紹介をしていきます。
陸上自衛隊は教育期間が割と多い
まず大前提として陸上自衛隊に入隊すると、新隊員時代から定年退官するまで「教育期間パート」と「部隊勤務パート」をくるくると繰り返すことになります。
教育期間とは「新隊員教育」や「レンジャー教育」など自衛官としてのスキルを学ぶ期間です。
皆さんが、よくメディアで目にするのは、多くは教育パートによるところが大きいと思います。「レンジャー激動の79日に密着!!」「へっぽこ学生、涙の幹部候補生学校」みたいなドキュメントはまさに「教育期間」の最たるものです。
陸自には多種多様な教育課程があります。パイロットやスナイパーになるための教育はもちろんのこと、ロシア語を学ぶ課程や暗号の課程まであります。さらには研究職として大学院への進学もすることや、米陸軍へ留学することさえあるので、一般企業以上に様々な技能を身につけることができます。
なお一般大・防大卒幹部で優秀な成績を収めると陸幕(防衛省)が「あの人を育てよう!」となるので教育ばかりで「部隊勤務を数年しかやってない」という人も出てきます。一方で運悪く教育の枠が取れないと「俺は教育課程にいけないじゃないか!」と地方の部隊で発狂寸前になっている人もいます。
運の要素をスマホゲームに例えて「ガチャ」と言いますが、教育入校もガチャなので運の良さが大切になります。
いずれにしてもそのような教育を通じて、陸上自衛官は専門技能を深めていくと思ってください。
陸上自衛隊の日常業務は地味な仕事ばかり
次に部隊勤務について書いていきます。
「自衛隊は毎日演習をしているのでしょ?」というイメージを持っている方も多いと思いますが、演習を行うには予算と場所の確保が必要なので毎日行うことは不可能です。
また演習を行なうにあたっては武器・器材の整備や細かい訓練なども行う必要があるので、一般部隊の日常業務は「演習前の調整が多い」と思っていただいていいでしょう。
一般部隊の日常業務を列挙すると、おおよそこんな感じです。
「体力練成」「係業務」「服務指導」「各個訓練」「部隊訓練」「草刈」「練成隊訓練」「検閲」「草刈」「格闘検定」「検査受験」「現地偵察」「射撃検定」「生地訓練」「臨時勤務」「出動訓練」「警備訓練」「災害派遣」「システム点検」「消防訓練」「統合防災演習」「草刈」「陸海空統合演習」「車両練成訓練」「機材整備」「演習場整備」「草刈」「草刈」などなど、細かく分かれていて多種多様です。
陸曹以上の隊員は上記業務いずれかの担当者となり、日々の業務を行っていきます。
言ってしまうと非常に地味な仕事ばかりです。
防護マスクの点検整備・小銃などの武器点検などをチェックリストに従って確認することも非常に大切な業務ですが、メディア受けしないのでこうした場面をテレビ番組で見ることはないでしょう。
陸士隊員には係業務は原則やらせないので、作業員として部隊にあるリヤカーの修理、偽装網を洗って干すだけの1日などもあります。
日常業務は普通のサラリーマンより楽といえば楽といえます。
ただ頑固オヤジみたいな陸曹に「バカモーン!こんなしまい方すると器材が痛むだろ!」と若手陸士が怒られていると「陸士も大変だなぁ」と思うのも事実です。
なお整備隊などに配属になり、工場でひたすら車両整備をしている隊員もいます。
いずれにしても、日常業務は多種多様でそれぞれの地味な仕事をやっていると思ってください。
次は職種紹介のお話
次回は職種について解説をしていきます。
「陸上自衛隊ますらお日記」はこういう話ばかりなので、
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