陸上自衛隊と歌について③

前回の続きの記事になります。

陸上自衛隊と歌について①

陸上自衛隊と歌について②

 

陸上自衛隊と歌についてご紹介します。

士気を上げるための曲について

陸上自衛隊では教育を受ける隊員の士気を上げるために「独自のテーマソング」が設定されているところもあります。

この独自のテーマソングは軍歌ではなく、一般的な歌謡曲(邦楽・洋楽)となっています。そちらの方が隊員の心に刺さりやすく、士気が上がるからです。陸上自衛官も本音を言えば国家や軍歌よりも流行っている曲の方が好きなのです(君が代と軍歌しか聞かない濃厚な変態も稀にいますが...)

この曲の選定は教官や助教のセンスであり、何がかかるかはわかりません。ただ毎日そうした曲を聴いて訓練が始まると「いい曲だなぁ」と思うようになります。

よくあるケースとして、レンジャー教育の厳しい想定演習などが始まる前に「心の準備」の時間としてテーマソング流れることがあります。

黙想に近い時間ですが、厳しい訓練の前に黙想をすると暗くなるのであえて曲をかけるのです。

 

レンジャー訓練は毎日が戦いだ!
防衛省HPより出典(https://www.mod.go.jp/gsdf/nae/2d/kunnrenn/rireki/29ranger/29ranger.html)

そして曲が流れ終わると、鬼教官や助教が「オラオラー!!さっさと動けーーー!!!!」とやってくるのです。知り合いの陸曹の方はこの時間を「地獄への執行猶予」と呼んでおり、恐れていたようです。レンジャー訓練は「水や食料の厳しい制限」「不眠不休」などの制限があるため、どんなに覚悟しても恐怖は心の底にあるものです。

あるレンジャー教育隊ではテーマソングがロッキーⅣ挿入歌の「Eye of The Tiger」だったため、このテーマを聞くと過酷な日々がフラッシュバックするようです。やはりレンジャーは半端ないですね。

また、移動間に隊員の士気を上げるために、トラックの荷台で歌を歌わせることもあります。ある区隊では教育の初日にゆずの栄光の架け橋を歌ったところお前らに栄光の架け橋は早いぞ!ウルフルズのガッツだぜでも歌え!」と激烈指導をいただいたようです。自分たちが歌う歌も指導なんて理不尽な世界ですが、そういう世界なのです。

そして訓練終了後に同期と集まってカラオケに行くと「テーマソング」をみんなで熱唱するようになります。防大でもテーマソングをかけて訓練をすることがありますが、そうした曲を聞くと今でも「あぁ...青春時代...」と思いますし、同期とキャンプなどに行くと絶対に誰がかけます。

やはり軍歌よりも歌謡曲の方が盛り上がるのは確かでしょう。

陸上自衛官はスナックが大好きだ!

陸上自衛官はスナックとみんなで歌うことが大好きです。

宴会で盛り上がったら、2次会〜3次会は部隊で行きつけのスナックに行きます。



この部隊で「行きつけのスナック」と言うのがキモです。店に入ると客が同じ部隊の人間ばかりになっており、もはやママが部隊の一員みたいになっているスナックもあります。

そうした店では入店した瞬間にママが「隊員たちのお気に入りのナンバー」を気を利かせて入れてくれたりします。僻地の駐屯地は自衛官の売上で持っている店もあるので、半分厚生施設のようになっています。

脱いで大暴れしても「そのぐらいじゃないと国を守れない」というママもおり、隊員たちの憩いの場になっています。

そうしたママが駐屯地の開放祭などに来ると「こんどは接待する側だ!」と隊員たちが案内します。持ちつ持たれつの良い関係とも言えるでしょう。

しかし、いきつけのスナックがやってないと違うスナックに行くことになります。

そうしたスナックが「他部隊の行きつけの店」だった場合、違う部隊の人ばかりの中で歌うことになり、「友達の友達の家」に遊びに来たような居心地の悪さを味わう事になります。

駐屯地の近くのスナックは自衛官だらけなので「他部隊の人たちもいる!やったー!」とは別になりません。全然知らない他部隊の人と店でスナックで同席するのは、一般のお客さん以上に気まずい雰囲気だってあるのです。

陸上自衛官が好きな曲


ちなみに陸上自衛官はサザンよりも長渕剛が一般的に好きです。甘く切ない青春ではなく、男だらけの青春を送ってきたので、自然と心情がそちらに傾くのでしょう。特にベテラン陸曹などは「長渕剛の通なナンバーをいかに歌うか」の謎の争いを始めます。

また北海道の隊員が多ければ、松山千春の「大空と大地の中で」で盛り上がり、青森出身の隊員が多ければ「津軽海峡冬景色」を歌うことも多く、モノマネが入ることもあります。

一方で九州の部隊では意外かもしれませんが「沖縄の歌」でよく盛り上がります。陸上自衛隊では「九州・沖縄」で西部方面隊という区分になっており、沖縄の隊員が九州に赴任し、九州の隊員が沖縄に赴任することも多いからです。


九州の部隊は武士世界のようにとにかく規則に厳しいことで有名ですが、沖縄の部隊は九州の部隊よりもおおらかな気質で規律も少し優しめだったりします。

そうしたギャップがあるので、沖縄でカルチャーショックを受けた九州出身の鬼陸曹が「三線と泡盛が似合う明るく面白いオッサン」になって帰ってきたなんてこともあります。

九州に配属になった沖縄出身の隊員は沖縄の青い海に思いを馳せて「島人ぬ宝」を熱唱し、沖縄に配属になった九州出身の隊員は「バニーガールのおねーちゃんがいるスナック」で霧島連山に思いを馳せながら長渕剛を歌います。

いい話ですね。

歌のお話はここまで

次回からはますらお日記の没ネタを投稿していきます。
「陸上自衛隊ますらお日記」はこういう話ばかりなので、
気になる方は書籍もどうぞ!


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