益荒男(ますらお)、この言葉を日常生活で聞いたことがある人はあまり多くはないだろう。益荒男の意味は「強く堂々とした、りっぱな男子」という意味であり、日本では古来から「良い男」の象徴として使われてきた言葉だ。しかし、現在では益荒男よりも草食系男子と呼ばれる「手弱女(たおやめ)」が女性に人気があり、益荒男はもはや現代の日本では絶滅危惧種となってしまったと言っても過言ではないだろう。しかし、日本にはまだまだ益荒男が多くいる組織がある。それが陸上自衛隊なのである。今回についてはそんな益荒男エピソードについて語ろう。
目次
1.
益荒男は辛ければ辛いほど良い
まず益荒男と呼ばれる男たちは思考回路が常人とは違う。戦国時代の武将である山中幸盛のように「願わくば、我に七難八苦を与えたまえ」という指向性があり、「辛ければ辛いほどよい」という益荒男特有の価値観がある。簡単に書き記すと下記のような志向が強い。
- 荷物は重ければ重いほど良い
- 雨は降れば降るほど良い
- 行軍は長ければ長いほど良い
- 気温は暑ければ暑いほど良い、寒ければ寒いほど良い
- 格闘の対戦相手は強ければ強いほどよい
普通の手弱女なら「いや~、こんな荷物持って長距離行軍無理でしょ...」と言ったり、「土砂降りじゃん...」と言うところを益荒男は「良し!強くなれる!」というポジティブシンキングを遥かに超えた「マスラオシンキング」によって苦難を肯定的に捉え、果敢にチャレンジをしていく。
さらに益荒男は土砂降りになれば「身体が洗えて丁度いいわ」と水たまりの泥水で顔をジャバジャバ洗ったり、「水分補給できて丁度良い」と雨水と一緒に戦闘糧食を食べたりする。通常の価値観で考えれば、マスラオシンキングはクレイジーかつパンクだ。しかし有事の際や大災害のときなど、個人の尊厳に奪われ、圧倒的な暴力に晒されたときにマスラオシンキングこそ正気を保てる方法であり、生きることができる証左なのだ。
九州の久留米にある陸上自衛隊の幹部候補生学校では「益荒男」ではないが「剛健」という名称を使っている。幹部候補生学校では面白いぐらいに剛健という言葉を使う。食堂のチャンポンから服の畳み方まで「剛健○○」と言う。
一方でマスラオと呼ばれる男たちは「有事や災害のために本当に強くなるために生きている」という意識の男もいれば「辛ければ辛いほど生きている感じがする」、「キツ過ぎると段々楽しくなってくる」という真正のマゾタイプもいる。私は前者の益荒男よりも後者の益荒男のほうが圧倒的に好きなため、今回についてはマゾタイプの益荒男について語っていこう。
2.
益荒男列伝
次に私が出会ってきた益荒男たちに語っていこう。
1.腐った食べ物をあえて食べる益荒男
あるところに二人の益荒男がいた。一人の益荒男が「有事や災害時になったら食べるものが無くなる。だから今から痛んだものを見極める訓練をしよう」言い、もう一人の益荒男も同意した。彼らは中隊で余って少し痛んだ弁当を食べたり、先輩から2年前の戦闘糧食を貰って限界を見極めていた。ある日、少し糸を引いて「これは絶対に食べたらヤバイ」という弁当を一人の益荒男は「これが食べれれば何でも食えるだろ」と食べた。さすがにもう一人の益荒男は食べなかったが、翌日に腐った弁当を食べた益荒男は食中毒となり「もう痛んだものを食べるのは止める」と言った。益荒男は部隊のメンバーに「糸が引いた弁当を食うと食中毒になる」ということをメンバーに教えたのである。
2.山に入って無限にキノコ採ってくる益荒男
あるところに「マリオ」と呼ばれる長距離が早い、細身の若手陸曹がいた。彼の風貌は素朴な純日本人という印象であり、イタリア人とも任天堂のキャラクターである「マリオ」からも離れており、なぜ「マリオ」と呼ばれているか私は不思議でならなかった。理由を聞いたところ彼は「トレイルランニング」が趣味であり、キノコを採っても良い里山にリュックを持って走っていき、下りてくる頃には大量のキノコを持って帰ってくるからだった。「足が早い+キノコ採りの名人=マリオ」というあだ名だったのだ。しかも彼は障害武装走も強かったのでスーパーマリオと呼ばれ部隊で尊敬される益荒男であった(さらに彼のキノコ収穫で宴会もはかどる)
3.痛みは脳の信号に過ぎない益荒男
ある益荒男は行軍中に足の皮がズル剥けに靴下は血で滲んでいた。しかし彼は行軍中に最も重い、無反動砲を持っても涼しい顔をして歩き続けた。常人であれば一歩も歩くごとに激痛が走り、顔をしかめるところだが彼は物ともしない。理由を聞いたところ「痛みはしょせん脳の信号に過ぎない。痛がってもしょうがないから感じるだけ無駄」と言い張った。これこそマスラオシンキングであり、益荒男の鏡であろう。もしあなたも辛くなったときは「所詮は電気信号」と思ってほしい、
4.謙虚な益荒男
あるところに謙虚な益荒男がいた。彼の口癖は「私なんか皆さんにおんぶに抱っこでここまで来れた」という謙虚なものだった。彼はいつも優しく、温和でニコニコしてるタイプだったが、いざ演習となると率先して重たい無反動砲を持ち、誰よりも早く山の中に消えていく益荒男だった。虚栄心や野心がなく、本当に部隊のために戦えるナチュラルボーンな益荒男だったのである。
5.川で栄養補給をする益荒男
あるところに野性味あふれた益荒男がいた。彼はド田舎の出身で大自然において「食べれるもの」「食べれないもの」の知恵がある益荒男だった。そんな彼と休日に歩いているとき川があった。そして彼は「栄養補給してくる」と言って川に下りて川エビを捕まえてもしゃもしゃ食べていた。捕まえた川エビを食べるなんて戦後かな?
3.
まとめ
世の中には手弱女が増え、益荒男は少なくなっている気がするがそんなことはない。益荒男は今日も陸上自衛隊というパラレルワールドにて飯を食い、体を鍛え、益荒男になっている。益荒男になるには生まれ持ったセンスも必要だがもし君が若ければ陸上自衛隊において益荒男を目指してほしい。もし益荒男についてもっと知りたければ下記の記事もぜひ読んでほしい。