防大・自衛隊の思い出をつづります。

自衛隊とマジック・ユーモア

自衛隊には一般人の想像を超えた話が多く存在する。飲み会ではとりあえずコップを食べれば面白いと思う男、鬼教官がいる教官室にムーニマン一つで飛び込む男、駐屯地の池の鯉を味噌煮にして食べてしまう男など普通では考えられないような話が誕生し、伝説と共に消えていく。

こういった話をすると自衛隊を知らない方々からは「有り得ない話だ」「作り話だ」とお叱りを受けることも多いが、自衛隊では一般常識を超えた話が毎日のように生まれ、日々記録が更新されるオリンピック会場なのだ。なぜ自衛隊ではこのような話が誕生するのか私なりに考察し、分析をしたのでここに書き留めておきたい。

1.娯楽の欠落

まず自衛隊などの軍事組織に所属したことのない人に伝えたいのだが、軍隊というものは娯楽が圧倒的に少ない。テレビもない、ラジオもない、ゲームもない、美人なお姉さんもいない殺風景で無機質な駐屯地や基地で自衛官は暮らす。さらに街の明かりが遠く離れた演習場の山奥で不条理な訓練に耐えたり、何週間も大地が踏めない艦艇での生活を余儀なくされる。

このような環境ではいくら仕事とはいえ、ストレスやフラストレーションが溜まり、人間は我慢できなくなってくる。そこで誕生するのは「ユーモア」と「ジョーク」なのだ。入隊してから現在に至るまで出会ってきた面白い人たちや面白いエピソードをみんなで夜な夜な語ったり、一発芸に磨きをかける隊員が出てくる。

そういった面白いエピソードや一発芸についてはベテランから若手に継承され、若手は新隊員に継承する。そうすることにより10年前に聞いた話が何故か未だに駐屯地や基地に根付いており「『伝説の○○』は××1曹のことらしい」など武勇伝として語り継がれるのだ。

そうした伝説が各駐屯地に広がり、若手陸曹が陸士を集めて「〇〇駐屯地の☓☓1曹は実はすごい男で~」と少し持って話したりするので、食堂をご飯を食べているおじさん陸曹を見て「あれが伝説の☓☓1曹!」と不確かな伝説でドキドキするのが自衛隊なのだ。

2.ギャグ要員の入隊

さらに自衛隊を語る上で欠かせないのが「ギャグ要員」たちの入隊だ。一般的に就職というものは組織の将来性や個人の特性、自分のやりたいこと等を分析して決めるものだが、自衛隊には「ギャグ要員」が一定数入隊してくる。

「ギャグ要員」について解説しよう。彼らは大抵、高校や大学において「人と違うことをしたい」という心情で「ギャグに命をかけて」生きてきた若者なのだ。自衛隊には「国家防衛のため」「生活の安定のため」といった理由で入隊する若者も多いが、実は「なんか面白そうだからきた」という頭のネジが外れた人種が自衛官候補生から一般幹部候補生まで一定数入隊してくるのも事実である。

「ギャグ要員」たちは自衛隊に入隊する前から「笑いが取れるなら裸になる」「笑いが取れるならマヨネーズ一気飲みする」などの常人では考えられない精神を発揮し、娯楽が少ない自衛隊ではあっという間に人気者になる

しかし新隊員の「ギャグ要員」は古参兵の「ギャグ要員」に「お前はつまらない」とダメ出しをされ、さらにユーモアが磨かれていく。さらに「ギャグ要員」については「○○派」「××派」とだんだんと流派が分裂し、飲み会で他流試合が開催されたり、流派が一つになることもある。

そういった「ギャグ要員」の中には「レジェンド」と言われる「並みのギャグ要員では到達できない高み」を持った隊員が希に誕生し、そうした「レジェンド」に出会った隊員は「レジェンドが生み出した至高のネタ」を死ぬまで持ち続けるのである。

なお陸上自衛隊ではたびたび「宴会余興での裸芸は絶対に禁止!」と指揮官や先任(曹長)からお触れが通達されるが、ギャグ要員たちは「これは振りなのか?本当に禁止なのか?」と宴会当日まで喫煙所や事務室で議論を行うこともたびたびある。私の防大同期いた中隊では「裸禁止じゃなければよいだろ・・・」という解釈をギャグ要員が行い、股間だけ隠れるアイテムを買って余興を行い、堅物の中隊長が激怒をしたと聞いた。

このように自衛隊ではギャグ要員が跋扈するため、自衛官や元自衛官たちは飲み会をすると「レジェンドが生み出したエピソード」を披露し、ポケモンバトルのように戦わせるのだ。これ故に自衛官の話はおとぎ話のようなエピソードが多く「盛りすぎだろ」と言われてしまうのだ。

3.結論

上記から私は自衛隊の面白話のことを「マジック・ユーモア」と名付けることにした。つまらない自衛隊生活という土壌に、ネジの外れた男たちが生み出す核兵器的なエピソードが大爆発を起こし、自衛隊の面白話は現実離れをしたユーモアとして輝くなのだ。

だがそれらの話は現実社会と乖離し、どことなく浮世離れした印象があり、一般人には信じがたい。現実にあったことでも、まるでアラビアンナイトの空飛ぶ絨毯や魔法ランプのようなおとぎ話になってしまうので「マジック・ユーモア」なのだ。

終わり

9 COMMENTS

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退官された3佐から聞いた話ですが
省時代の正門立番で前を向いていなければいけないので
待機中の要員から来るブザー1回で敬礼、2回で捧げ銃という決まりだったんだそうです。
24時間シフトなのでだんだん飽きがくるとブザーは連打され、疲れたバディがまだ立っていられるかどうかをブザーへの反応で確認したりとだいぶキツいジョークが繰り広げられていたんだとか

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あき

いつもぱやぱやさんのツイートを楽しみに見ています。
自衛隊に入隊すれば自然とぱやぱやさんみたいな面白いジョークやユーモアを言えるようになりますか?

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