益荒男(ますらお)、この言葉を日常生活で聞いたことがある人はあまり多くはないでしょう。益荒男の意味は「強く堂々とした、りっぱな男子」という意味であり、日本では古来から「良い男」の象徴として使われてきた言葉です。陸上自衛隊には益荒男と呼ばれる男たちは大勢います。しかし益荒男には一つのタイプしかいないようで、実は複数のタイプがあります。正統派の益荒男から野生児系の益荒男まで幅広く陸上自衛隊にいるのです。それではここで益荒男タイプについて解説をしていきましょう。
目次
1.正統派の益荒男
この益荒男のタイプは「自分が強くないと国を守れない」と心の底から思っており、辛いときも皆を励ます漫画の主人公のようなタイプです。もちろん本人も演習中に辛いと感じることは多いと思いますが「ここで俺が弱音を吐いたらダメだ!」と奥歯をグッと噛み締めて、前に進んでいきます。彼らこそ陸上自衛隊が推奨している益荒男の姿であり、理想の自衛官像とも言えます。優しい人が多いので、上司・部下からの信頼が厚く、定年退官のパーティーには大勢の人が押しかけるでしょう。
2.体育会系の益荒男
学生時代に強豪校の野球部などに在籍していた人が「体育会系の益荒男」になりやすいです。彼らのフィジカルモンスターと称されるほどの体力を持ち、厳しい訓練でも「○○高校野球部の練習よりマシ」と語ります。登山部出身者やトレイルランを趣味でやっている人もこのタイプに該当します。この手のタイプはレンジャー訓練に言っても「楽しかったよ」や「思ったよりもキツくなかった」、「この前にプライベートで行った登山のほうがキツかった」など常人では考えられないようなことをいいます。ただ基本的には規格外なので演習などで「えっ、この程度でへばるの?」と悪気なく周囲に言うので、後輩からは好かれないタイプと言えるでしょう。
3.冒険家系の益荒男
冒険家系の益荒男は「誰もがやったことのない訓練」や「新記録の樹立」などが好きであり、降り積もった雪に自分の足跡をつけるのを好むタイプです。新しい部隊が設立されればいち早く手を上げて志願をしたり、休日は猟銃を持って山を超えていくタイプです。己の知識と勘を頼りに進んでいく狙撃手や偵察隊に向いており、アルピニストに似た孤高感があります。この手のタイプは自衛隊退職後にサハラ砂漠のウルトラマラソンに参加したり、大学院に行ったりと結構突拍子のないことをしがちです。独立心とバイタリティがあるので単独作戦向きと言えるでしょう。
4.クレイジー系の益荒男
このタイプは「キツイことをすると脳内麻薬が分泌されて気持ちいい」と語る変態であり、基本的にクレイジーです。キツイことを乗り越えることを生きがいとしており、窮地に立たされるとドーパミンが過剰放出される印象があります。周りがへばっているのに一人だけ楽しそうにしているのが特徴です。ただ普通の隊員が嫌がるような重量物の運搬などを嬉々として参加するので、部隊には欠かせない存在です。地獄に強いタイプなので有事の際には一番槍として大活躍するタイプとも言えるでしょう。
5. 偽益荒男や隠れ益荒男の存在
偽益荒男も中にはいます。ニセ益荒男とは陸上自衛隊の益荒男信仰に便乗をして「辛ければ辛いほどいい」と言っている割にはすぐに弱音を吐いたり、楽なほうに流れてしまう人です。確かに人間らしいと言えば人間らしいのですが、言動不一致ですぐに心が折れてしまうのはカッコイイとは言えません。こういった人たちのことを陸上自衛隊では「役者」といいます。彼らは「本音ではそう思っていないが、評価があるからそれっぽくする」ことに力を注ぎます。ただ言葉では熱いことを言っても辛いときに自己中心的に振る舞いを見せたり、訓練を妥協をしがちなので「役者だな」と周りの隊員から蔑まれてしまいます。偽益荒男や役者と言われるのは陸上自衛官として最も不名誉なことの一つなので、避けなくてはいけません。
一方で「今回の訓練は絶対に乗り越えられない」「俺にはこんなこと無理だ」と弱音をボロボロ言うのに、誰よりも体力があって演習が終了してもケロッと元気にしている人もいます。彼らは謙虚というよりも「人一倍自信がないのに、人一倍体力がある」という心身のミスマッチからそのような発言に至ります。発言は情けないですが何だかんだ強いので「隠れ益荒男」であり、部隊長からの推薦でレンジャー訓練に参加していることもあります。
「無理だよお」と言いながら何だかんだレンジャーバッチを獲得してくるのはさすがとしか言いようがありません。偽益荒男と隠れ益荒男が同じ部隊にいると演習経過とともに綺麗なコントラストを見ることができるので、一つの見どころと言えるでしょう(偽益荒男は最初元気だが尻すぼみ、隠れ益荒男は最初弱気だが普通に乗り越えます)
まとめ
益荒男は一朝一夕でなれるものではありません。でもあなたが心の底から益荒男になりたいと望むのであれば、益荒男になれるでしょう。