防大・自衛隊の思い出をつづります。

ときめきに死す~防衛大学校の棒倒し~①

防衛大学校に一般大学にはあり得ないイベントが複数存在する。その中でも特に目玉イベントが「棒倒し」だ。棒倒しはスポーツではない。「死合」であり「合戦」なのだ。そして毎年「棒倒しのためなら死ねる」と語る「棒キチ学生」が誕生する。今回はクレイジーな防衛大学校の棒倒しについて解説をしていこう。

1.棒倒しとは

「棒倒し」について当初解説をしよう。棒倒しは言ってしまえば非常にシンプルな競技だ。防御が棒を支え、攻撃が相手の棒を倒す。そして先に棒を倒したほうが勝ちになる競技だ。棒倒しは旧軍の海軍兵学校も行っていた伝統ある競技であり、戦後は防衛大学校が伝統を引き継いでいる。防衛大学校の棒倒しは大隊対抗(1~4大隊)で毎年の開校記念祭で行われており、例年やってくる棒倒しファンもいる。

棒倒しはシンプルな競技だが行うときのレベル設定が大切だ。怪我人0の「おままごと」なレベルにするか、怪我人続出の「死合」のレベルなのかで実際の競技に大きな差が出る。もちろん防衛大学校の棒倒しは「死合」なので怪我人がドカドカでる。本番時には救急車も待機しているほどである。棒倒しは暴力は厳禁とされているが、場外乱闘状態も偶発的に発生する。もうよくわからないが、そんな感じの温度感が防衛大学校の棒倒しだった。

2.棒倒しに対する学生の温度感

棒倒しは防衛大学校の学生が全員「棒倒し大好き!!」というわけではない。棒倒しに関しては学生間でも温度感が分かれる。学生の温度感についてはだいたい下記のパターンに分類できるだろう。

1.棒倒し大好き学生(棒キチ)10%
このタイプの学生は1年中棒倒しのことを考え、口を開けば「今年は連覇~」「〇大隊に雪辱を晴らす~」と言っている。彼らにとって棒倒しとは「関ヶ原の戦い」に匹敵する天下分け目の大いくさであり、悔しい負け方をすると「チエスト棒倒し!」と島津義弘公のようなことを言いかねない温度感がある。なお勝っても負けても棒キチは号泣する。防衛大学校の棒倒しは彼らによって支えられているといっても過言ではないだろう。

2.イベントごとが好きな学生(一般学生)40%
このタイプの学生は「別に棒倒しが特別すきじゃないけど、イベント好きだから~」と棒倒しに前向きに取り組む民であり、夏休みにロキノンのライブや地元のお祭りではしゃぐタイプだ。基本的にノリが陽キャの体育会系の学生であり、棒キチとともに熱い青春と最高の思い出を棒倒しで作り上げていく。

3.棒倒しが嫌いだけどやる気ある風な学生(百姓足軽)30%
このタイプの学生は「棒倒しマジ無理、痛いしケガする」と棒倒しが嫌いだが、学生舎の熱気的に参加せざるを得ないので付和雷同的に練習に参加する。そんなに棒倒しに熱心ではないが、「棒キチ」や「一般学生」の手前では「よっしゃ!今年は絶対優勝!」など心にもないことを言う。こうした学生たちは「棒倒しは勝ち負けより、怪我せずに終わることに意義がある」と語るため、怪我をしないように戦う百姓足軽みたいな戦力になる。

4.そもそも参加しない学生 (不参加組)19%
このタイプの学生は棒倒しが好き嫌いではなく、様々な理由があって参加できない。式典に参加する「儀じょう隊の学生」「吹奏楽部の学生」や「女子学生・留学生」なども該当する。なおラグビー部やアメフト部も「試合を控えている」という理由に加え、「彼らが参加すると危険すぎる」という理由で私がいた当時は参加しなかった。彼らは棒倒し無関心なタイプもいれば、「棒倒しにマジ出たい!」と主張する巴御前みたいな女子学生もいる。

5.アンチ棒倒し学生 (はぐれ組)1%
このタイプの学生は「棒倒しなんて伝統は廃すべきではないか?」という謎の理論提唱をするタイプである。「学業に専念すべき~」や「負傷率をみると~」など語るが大抵は相手にされない。防衛大学校よりも一般大学向きなタイプといえよう。

なお私は「棒倒しが嫌いだけどやる気ある風な学生」タイプだったので、正直棒倒しが好きじゃなかった...。この記事はその視点が書いているので了承願いたい。

3.棒倒しで得られる名誉について

棒倒しは4個大隊(1~4大隊)の学生舎ごとにチームが分けられ、トーナメント方式で競技が行われる。トーナメントを優勝すると「棒倒し優勝大隊」といった看板とトロフィーが貰え、学生舎を「俺たちが優勝したんだ!」と練り歩くことができる。つまり棒倒しに優勝すると大隊に名誉が貰えるのだ。

さらに指導官から恩恵として「外泊回数が増える」「就寝点呼(寝ながら点呼を受けられる)」「自習時間中におかしパーティーしてもいい」「学生舎の上級生が優しくなる」などもある。刑務所の囚人が享受するようなメリットだが、当時の学生たちはそれだけの恩恵で脳みそが痺れていたのも事実なのだ。ちなみに1回戦目で負けると学生舎の雰囲気が悪くなり、生活が殺伐としだすので当時の1学年にとっては死活問題だった。

なお棒倒しは不思議なことに「強い大隊」と「弱い大隊」が生まれる。期別によっては「1大隊がひたすら連覇していた」や「2大隊が一番強い」などの時代がある。連覇をしている大隊には「棒キチ学生」が多いので、1学年に「棒倒しで死ぬか、俺に殺されるかどっちかにしろ」など無茶苦茶なことを言う傾向がある。ただ棒倒しを死ぬ気でやると普通に大怪我する可能性があり、怪我で留年になる可能性もあるので気を付けよう。

4.次回は棒倒しの戦術について

おっす!オラぱやぱや!
いよいよ各大隊では棒倒しの修行を始めたぞ
ぱやぱやは、辛くて逃げ出したくなったんじゃなったぞ
忘れるな!開校記念祭までたった2ヶ月しかないんだぞ!
次回、防衛大学校Z『明日なき学生舎!勝利への遠い道のり』
部屋長、僕たち本当に優勝できるかな?

3 COMMENTS

グローバルコム

的確な分析で舌を巻きました!私も棒倒しには熱くなれず「百姓足軽」でした(笑)

横になりますが、我々の頃には朝霞の観閲式は毎年あり、今と同じく某大は全自衛隊のトップで行進するので、棒倒しの練習と同じくらいの密度で練習していました。

観閲行進は、スターもいなければ、百姓足軽もいない(あえて言えば、儀礼刀を持つ学生長はスターと言えるかもしれませんが)ですが、パレード訓練自体が好きだったので、熱くなる必要もないのに、熱くなってやっていました。

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