知られざる陸上自衛官のアフター5③

陸上自衛官は一般のサラリーマンとは異なり、アフター5こそが修行の場でもあるです。修行と言っても色々な種類の修行をする隊員がいます。今回はアフター5に修行をする、ますらお系隊員について解説をしていきましょう。①、②を見ていない方はこちらからどうぞ。

知られざる陸上自衛官のアフター5①

知られざる陸上自衛官のアフター5②

持続走ますらおのトレーニング

陸上自衛隊には持続走を練成しているランナーたちがいます、彼らは長距離走のエキスパートであり、中には箱根駅伝経験者もいます。彼らは一見ほっそりしていますが体力値が非常に高く、マッチョ系ますらおと負けずの強者です。マッチョ系ますらおが野武士だとすれば、ランナー系ますらおは忍者と言えるでしょう。



陸上自衛隊では「富士登山駅伝」に優勝する事が誉れとされています。登山駅伝をご存じではない方のため説明をしましょう。この大会は富士山の登山道で実施される駅伝で、常識的に考えれば頭がおかしい大会です。出場する選手に山道を走るコツを聞くと「登りはとにかく根性、下りは度胸」などいいます。

現に彼らが富士登山駅伝で下っている姿をみると、遠くから火山灰を巻き上げ、イノシシが突進するがごとく駆け下りてきます。たまにランナーが躓いて、火山灰の海にゴロゴロと転がり落ちる壮絶なシーンが映し出されます。その過酷さから「ますらおの、ますらおによる、ますらおのための駅伝大会」と言っても過言ではないでしょう。

第一空挺団HPより出典(https://www.mod.go.jp/gsdf/1abnb/posts/faq3.html)

この過酷な大会に参加する選手は日々体を鍛える必要があり、大会に出場する隊員は業務終了後にトレーニングを行います。富士登山駅伝の急傾斜区間を走る人は走力だけでなく、登山のスキルも求められるので、駐屯地近傍の山に行き、道なき道をガンガン走ります。また急傾斜の下りも忍者のように駆け降りるので、彼らの練習を風景を見た外国人は思わず「ニンジャ!」と感嘆の声を漏らすでしょう。

ある隊員は山道をとんでもないペースで走るのに、帰りにはキノコをゲットして帰ってくることもあります(もちろん地元の許可はとってます)つまり富士登山駅伝に参加する選手は、忍者もしくはマリオみたいなスーパーマンだと思っておいてください。

その中でもレジェンドよばれたランナーの隊員は、来る日も来る日も富士山の山道で鍛錬した結果、なんとトレイルランの世界的選手になったそうです。彼の記録を聞きつけた企業が「ぜひ、スポンサーになりたいのですが」とアプローチしたきたそうですが、彼は自衛官なので当然断ったそうです。何とも惜しい話ですね。

このように陸上自衛隊のランナーには本物アスリートがいますが、一流のランナーの中には「別に走れればなんでもいいよ」と田舎の中学生みたいなジャージを着て練習する強者もいます。「足の遅いど素人」にしか見えないのに恐ろしく足が速い人がいるのも陸上自衛隊の七不思議と言えるでしょう。

しかし、悲しいことに陸上自衛隊には「運動不足と不摂生」から体力検定に合格できなくなったオジサンたちもいます。彼らはランニングをすると「俺を見るな先にいけ」と汗と涙で顔を歪ませながら走ります。その姿は全然客の入らないラーメン屋のオヤジのような悲壮感があり、斜陽という表現ぴったりです。


ただ組織としては彼らを体力検定に合格させる必要があるので、私の知り合いの中隊長の方はオジサンたちを集めてはランニングをさせていたそうです。そして中隊長はある日、タイムの結果が「良い日」と「悪い日」がある事に気が付きました。詳しく分析すると「女性隊員がいるときだけタイムが上がる傾向にある」という発見し、体力検定本番は女性隊員を伴走者にした結果、見事に合格したようです。男は何歳になっても女性に良い姿を見せたいものなのですね。

地獄の銃剣道練成隊

ますらお系隊員たちを語るとき、レンジャーや空挺などの名前がよくあがりますが、銃剣道にも陸上自衛隊を代表するますらお達がいます。

陸上自衛官にとって銃剣道の練度が部隊の強さを示す一つの指標になっています。そもそも「銃剣道とは何?」と思う方も多いと思うので説明をしましょう。銃剣道とは剣道の竹刀を「銃剣に模した木銃」に持ち替えて、その先端で突き合うという競技になります。剣道の経験がある方ならわかると思いますが、突きは普通に痛いです。

群馬地方協力本部Twitterより出典(https://twitter.com/gunma_pco/status/1376724221024342016/photo/3)

この銃剣道の部隊練度を上げるために行うのが「銃剣道錬成隊」です。彼らは強さを求めて毎日修行をするため、毎日が高校の夏合宿みたいになります。銃剣道の練習では容赦なく突かれるので、経験の浅い若手は練習が終わると全身が紫のあざだらけになります。その姿は五反田でハードSMを楽しんできたマゾに通ずるところがあります。

私は銃剣道練成隊に参加をしたことがないのであまり詳しくはないのですが、普段訓練で涼しい顔をする体力自慢の若手も、ボコボコにしごかれるので死にそうになります。メンゲロと呼ばれる「面を付けたまま嘔吐する」という事態も発生します。強くなるのは楽ではないのです。

なお九州にある普通科部隊などに配属されると強面の曹長に「きしゃんは、いい体しちょるけぇ、銃剣道練成隊にはいりんしゃい!」と田舎の消防団のように、半ば強制的に加入させられるようです。決して地本のオジサンみたいに「君はいい体してるね、銃剣道練成隊に入らないカナ?(*^^*)」とは言われません。

これから入隊する人にお伝えをしたいのですが、任期満了で退職をする部隊の先輩から「無料で防具あげるけどいらないカナ?(^_-)-☆」と聞かれても、銃剣道錬成隊に入りたくない場合は頑なに断ったほうが良いです。この銃剣道の防具を持っていると「防具あるなら加入な!」と誘われてしまいます。そしてメンゲロするまで外せない「呪いの防具」なってしまうからです。


ドラクエに登場する呪いのアイテムみたいになります。

この銃剣道は剣道と全く異なる競技ですが、やはり剣道部出身者は有利です。そのため剣道部出身の若手は、母校の部活に顔を出し「おまえら、ぜってえ陸上自衛隊に入ってくれよな!」と次回予告の孫悟空みたいなスカウトを行うこともあるようです。強くなりたいなら銃剣道をやるのもありでしょう。

つづく

今回はここまでです。
ネタはまだまだストックあるので、
「面白いです~」という更新されますよ。はい~

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