知られざる陸上自衛官のアフター5⑥

 

陸上自衛官のアフター5に欠かせないのが洗濯です。1日の厳しい訓練後にはしっかりと洗濯をして、翌日の訓練に備える必要があります。今回はアフター5の洗濯について解説をしていきましょう。


バックナンバーは下記からご覧ください。

知られざる陸上自衛官のアフター5①

知られざる陸上自衛官のアフター5②

知られざる陸上自衛官のアフター5③

知られざる陸上自衛官のアフター5④

知られざる陸上自衛官のアフター5⑤

洗濯物はすぐにやろう

あなたが一般的な一人暮らしをしているのであれば、洗濯物を3日溜めてもさほど問題はないでしょう。

しかし陸上自衛官は違います。まず基本的に陸上自衛官は4着の迷彩服しか支給されません。そのうちの1着は演習や戦闘訓練用のボロ迷彩服なのであまり着ず、もう1着は式典用に着る新品の一張羅として残しておきます。そのため普段は2着の迷彩服を主力として着回す必要があります。

日常業務でも長袖上下でブーツも履くため、夏場は特に訓練をしていなくても自然と汗が流れ落ち、迷彩服に大きな汗染みができることも珍しくありません。特に夏場は洗濯をサボり、うっかり洗濯汚れた下着を詰め込んでいると、居室にとてつもない異臭を放つようになりバイオテロが発生します。もちろん共同生活なのでそのような衣類を持ってると、ツーブロックのオラついた陸曹から「おい臭えぞ!!目が痛くなるスメルがするぞ!あっ、お前!洗濯物を放置プレイしているだろ!」と暖かい指導を頂くので気を付けましょう。

見た目がラッパーの輪入道な先輩(出典元 https://kai-you.net/word/%E8%BC%AA%E5%85%A5%E9%81%93)

根本的には陸上自衛官は、泥に塗れる仕事です。どんな高級幹部でも泥まみれなることは珍しくありません。それが陸上自衛官なのです。ただ昭和の〇☓クイズに外れたように、泥まみれに汚れた衣類を洗濯機に突っ込むと故障原因になります。そうした事態を防ぐために洗濯室には手洗い専用の流し台があります。陸上自衛官は泥汚れは慣れっこなので手早くパッパとこすり洗いして泥を落とします。特に厳しい訓練後などは一列となり、水洗いする人、泥を落とす人、ブラシでこする人、すすぐ人など分業化し、ちょっとした洗濯工場のようになります。

ところが、泥の種類によっては中々泥が落ちません。悪名高いのが「久留米の赤土」です。久留米にある高良台演習場の赤土は粘土質で目が細かく、一度泥にまみれると大変です。雨が降った日に訓練をすると陸上自衛官の緑の迷彩は、みるみる赤茶けたレンガ色になっていき「茶色一色の戦闘服」が誕生します。こうなると何回洗ってもなかなか落ちず、難儀します。乾くと赤土がぼや~と浮き出てくるのです。赤土には気を付けましょう。

脱落していく洗濯機たち

陸上自衛隊の生活隊舎にはちゃんと「洗濯機と乾燥室」が必ず設置されています。設備が良いところだと乾燥機まであります。これだけ聞くと「えっ?わりと設備が良くないか?」と思うかもしれませんが、自衛官にとって洗濯とは一つの戦場なのです。

まず、陸上自衛官にとって「洗濯機は消耗品である」という考えが染み付いています。陸上自衛隊の洗濯機はかなり汚れた衣類を「おいそぎ」で毎日5時間ぐらいぶっ通しで使われることになります。なぜ「おいそぎ」かと言えば洗濯物一台に対して洗濯したい隊員が多いからです。こうした事情のため、洗濯室には次に洗濯をしたい隊員が、前の人の洗濯が終わる前から待ち構えています。もし新隊員が「パワフル洗濯モード」など、時間がかかる設定をした場合、チョコプラ長田みたいな顔をした営内班長から暖かいご指導を頂く事になります。

左の長田は訓練陸曹顔 吉本興業HPより出典(https://profile.yoshimoto.co.jp/talent/detail?id=2667)

もちろん何時間もフルパワーで回り続けても大丈夫なように洗濯機は設計されていないので、洗濯機はドンドンと壊れていきます。ただ陸上自衛隊には予算もないので、部隊の洗濯機は安物のアジアメーカーだらけになります。この話をすると「国産の良いやつを買った方がいい」と言う人もいますが、装備実験隊が「メーカー毎の洗濯機の費用対効果」を検証するわけもないので、格安な二流、三流のアジアメーカーが導入されがちです。

当然、洗濯機が壊れたからと行って当然すぐに新しい洗濯機を買って貰えるわけもなく、部隊は1台分壊れた状態が出た状態で運用されます。こうなるとメンバーが1名抜けた状態でサッカーをやっているような状況なので、残った洗濯機により負荷がかかります。一台、また一台と「名探偵コナンの登場人物」のように頼りなる洗濯機さんの息が絶え、最終的に「相次ぐ故障でいよいよ残されたのはこの3台だけか」とハードボイルドSF小説のような展開になります。

こういったときでも日立や東芝の洗濯機は生き残っていることが多く、「日本製品が世界で一番良い」と嬉しそうに語る、発展途上国のオジサンの気持ちがわかるようになります。



当然、このような状況になると、洗濯したくてもできない隊員が発生するため「おいそぎ設定+シェア洗濯」という手法で乗り切るようになります。このシェア洗濯とは洗濯ネットに個人毎の洗濯物を入れ、3人ぐらいで一辺に洗濯する技です。洗濯ネットをつけないと、迷彩服や靴下の所有権で揉めるので注意しましょう。みんな似たような下着なのでわからなくなります。ただシェア洗濯をしていると「俺のも入れてよ」と入れてくるオジサンも登場するので、キャパオーバーとなり、洗濯機が怒りと混乱でガタガタと震えていることも珍しくありません。洗濯物の入れすぎには気を付けましょう。

なお洗濯物は消灯前までに終わらせるというルールがあり、終わっていないと当直に怒られます。教育隊でこのようなことを誰かがやると区隊全員が消灯後にたたき起こされ、説教が始まるので気を付けましょう。しかし消灯までに間に合わないからと言って、脱水の回転が終わってない洗濯機に手を突っ込んではいけません。洗濯機の遠心力は凄まじく最悪指がちぎれます。消灯までに間に合わない時はあきらめましょう。

洗濯機のルールを守れ

洗濯機不足の状況が深刻化すると洗濯物が間に合わなくなるため、他中隊の洗濯室に不法アクセスする洗濯機ハッカーが現れます。彼らは汚れた洗濯物をもって他中隊のフロアに現れ、洗濯機を使用する不届き者です。あくまでも洗濯機の割り当ては決まっているので、そのようなハッキングはご法度です。

洗濯機が不足する問題はどこの中隊も一緒ですし、戦闘服の紛失などにも繋がるのでやってはいけないのです。当然バレるとチョコプラ松尾みたいな他中隊の上級陸曹が顔を真っ赤にしてやってきて、めちゃくちゃ怒られることになります。たかが洗濯機ですが各中隊にはルールがあるので、領土侵犯などをすると中隊関係が悪化します。新隊員は軽率な気持ちで行動をするのはやめましょう。

右の松尾は補給陸曹顔 吉本興業HPより出典(https://profile.yoshimoto.co.jp/talent/detail?id=2667)

ただ洗濯機問題があまりに深刻化し、部隊業務に支障が出るようになると、駐屯地の業務隊に泣きつく形になります。そうすると定年前のベテランの陸曹が「しゃない、こいつが最後の一台だ。大事に使いなぁ」と往年の2層式洗濯機を倉庫から取り出してくれます。こうした場面はガンダムなどの「こいつぁ旧式機体だがまだまだ使えるぜ!」と整備倉庫から前大戦で活躍したモビルスーツを出すシーンに似ています。

この2層式洗濯機の優れているは、全自動じゃないから手間が掛かるが圧倒的にタフという優れものです。ハードユースされる災害派遣の現場でも大活躍します。ローテクはハイテクに勝ることもあるのです。

つづく

今回はここまでです。
ネタはまだまだストックあるので、
「面白いです~」という更新されますよ。はい~

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